水を得た魚⇄魚を得た水

ほんとうは「水を得た魚」と言いたかったのに「魚を得た水」と言い間違えた人がいました。単純に「魚」と「水」の文字の位置を間違えただけなのですが、その文字の入れ替わりによって世界観はすっかり変わってしまいます。普段、私たちは文字を思考や表現の道具として使っていますが、実は文字のほうからも私たちに何かを訴えかけてくるような、文字が私たちを突き動かすということもたくさんあると思うのです。  頭の中で書かれる文字は、閉ざされた世界にあって、個人によってのみ書かれ読まれるものですが、もしそれを声に出したり、書き出したのなら、音声や形ある文字となって他人と共有することができます。その文字は旅をするチャンスを得て、誰かの耳や目に触れることになり、次々と新しい意味を持つようになるのです。姿形をかえながら人と人の間を移動してゆく軽やかさ、人々のあらゆる感情を受 … 続きを読む 水を得た魚⇄魚を得た水