Event RESIDENCE TALK EXHIBITION 2023.8.18_Fri - 8.27_Sun 婦木加奈子展覧会　いなさ

2023年度浜松市鴨江アートセンター制作場所提供事業アーティスト・イン・レジデンス

この度、鴨江アートセンターでは当館アーティスト・イン・レジデンスにて浜松での滞在制作をしたアーティスト婦木加奈子さんの展覧会を開催します。
5月、作家は、離れて暮らす身近な人の死をきっかけにして「存在」についての探求を始めました。7月、浜松の盆義理文化から着想したアートプロジェクト「迎え火」で、あらゆる死者の拠り所となる無名の祭壇を彫刻作品として制作しました。その後作家は「死」を「不在」と読み替えました。本展覧会「いなさ」は、現代に生きる私たちに、人間が否応なく直面する別離とその受け入れのありかたをあらためて問いかけます。

＜アーティストより展覧会に寄せて＞
　「死」という出来事の先にも残された人間の生活は続いていく以上、「死」によって姿を変えた形でその人の存在が生活の中に残っていくこととなります。「死」の後に残されるのは、その人がそこにいて・今はもういないということ、つまり「いなさ」の存在です。この「いなさ」の存在を、ある人は「霊」として見出し、供養という形で生活の中に残しました。私はこの「いなさ」の存在を、もっと触れて、身近な形としてあらわしたいと思いました。たとえばその人が生前に育てていた野菜の苗の姿、この残された苗の形こそが、その人が確かにそこにいて今はもういないということの形、「いなさ」の形に思います。
　浜松で暮らすうちに見つけたり、拾ったり、鴨江アートセンターをとおしていただいたりして、衣類などの布、布団、座布団、椅子や引き出しなどの家具、うつわなどが私の元へと集まってきました。それらには誰かが確かに使っていた跡がしみついていました。このしみついた跡の中にも「いなさ」の存在を見出すことができるように感じています。これらのものたちにヒントをもらい、このものたちを触り、縫い合わせることをとおして、「いなさ」の形を探っています。
　死というものについてを考え抜くこと、分かり切ろうとすることは、同時に、生きること、生きていくこと、生きていく上で見えてくるあらゆることへと目を向けることでもあります。（婦木加奈子）

＜アーティストトーク＞
2023年8月26日（土）18：00～19：00
作家の婦木加奈子さんに展覧会の作品の背景や浜松での滞在制作のお話を伺います。
お話：婦木加奈子さん
聴き手：澤柳美千子（鴨江アートセンターアーティスト・イン・レジデンス担当）
※展示会場内にて開催します。
※ご予約方法はページ下部をご覧ください。ご予約をいただいた方は優先的にお席を確保します。予約なしでも当日の混雑程度によりお席をご用意できる場合にはご参加いただけます。

婦木加奈子　プロフィール

ある典型的な彫刻を象徴する「場を支配する圧倒的な存在感」「不動性」「不変性」「唯一性」「自立」「重さ」などといったある種の「絶対的」とも思える性質に対して、身近な世界の中で「相対的」に存在する彫刻のあり方を模索しています。
彫刻を身につけること、外へと持ち出し周辺の環境の中へと置くこと、汎用的で軽やかな素材や手芸的な制作手段を用いること、などの方法をとおして「彫刻」や「作品」のもつ「絶対性」を解体することを試みています。

兵庫県生まれ、東京都在住。2019年金沢美術工芸大学美術科彫刻専攻を卒業後、2020年　チェルシーカレッジオブアート グラデュエートディプロマファインアートコース修了。
主な展覧会歴・受賞歴に2022年「第１回MIMOCA EYE / ミモカアイ」審査委員個人賞（杉戸洋賞）（丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 / 香川）、2022年 個展「TOKAS-Emerging 2022『ストレンジャー』」（トーキョーアーツアンドスペース本郷 / 東京）、2022年 個展「花盗人」（恵文社一乗寺店ギャラリーアンフェール / 京都）など。

ウェブサイト：https://www.kanakofuki.com/
instagram：https://www.instagram.com/kanakofuki/

謝辞
作品制作にあたり、小楠達司さん、茎田さんご一家にご協力をいただきました。ありがとうございました。　主催者